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インフルエンサーの「PR」表示はなぜ必須?ステマ規制違反の実例と消費者の見抜き方

2023年10月施行のステマ規制で、インフルエンサー投稿の「PR」表示は法的義務に。違反事例と消費者が広告を見抜くコツを解説します。

公開: 2026-05-28更新: 2026/5/28
インフルエンサーの「PR」表示はなぜ必須?ステマ規制違反の実例と消費者の見抜き方

「このサプリ、本当に飲んでよかった〜!肌の調子が全然違う✨」

——フォロワー10万人の美容系インフルエンサーが、いつもの自撮りと一緒に投稿した一枚。コメント欄には「私も買ってみます!」の声が並ぶ。でも、その投稿の隅に「#PR」の文字はあっただろうか?

Aさん(32歳・女性・事務職)は、推しのインフルエンサーが絶賛していた1万円の美容ドリンクをポチった。届いて飲み続けても、特に変化はない。後日、別の投稿者が「あれ、案件らしいよ」と暴露しているのを見て、ようやく気づく——「広告だったの……?」

これは作り話ではない。2023年10月、いわゆる「ステマ規制」が施行され、こうした隠れ広告は法律違反になった。

ステマ規制とは何か——景表法に新設された「告示」

2023年10月1日、消費者庁は景品表示法第5条第3号に基づく**告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」**を施行した。

ざっくり言えば——**「広告なのに広告だと分からない投稿は違法」**ということ。

事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの (消費者庁告示第19号)

これまで日本では、ステルスマーケティング(略してステマ)を直接取り締まる法律がなかった。海外では当たり前に規制されていたのに、日本は「広告先進国の中で唯一の空白地帯」とまで言われていた。

その空白が、ようやく埋まった。

規制対象は「事業者」だが、影響は投稿者にも及ぶ

ここで重要なのは——罰せられるのは広告を依頼した事業者(企業)であって、インフルエンサー本人ではないという点。

しかし、企業から「PR表示するな」と指示されて投稿した場合でも、企業側が措置命令を受ければ、そのインフルエンサーの名前は実質的に公表に晒される。信用は一発で吹き飛ぶ。

<div class="callout-tip"> <div class="callout-title">ステマ規制の3要件(ざっくり版)</div>
  1. 事業者が表示内容の決定に関与している
  2. その投稿が「広告」だと一般消費者に分からない
  3. → アウト(景表法違反)
</div>

「PR」表示があれば全部セーフ?——実はそう単純じゃない

「#PR をつければOKでしょ?」——よく聞かれる疑問だが、消費者庁の運用基準はもう少し厳しい。

NGとされる「形だけのPR表示」パターン

パターン具体例なぜダメか
①大量ハッシュタグに埋没#美容 #コスメ #スキンケア #おすすめ #PR #映えPRが他タグに紛れて視認困難
②文末に小さく一言投稿の最下部に「(PR)」とだけ追記スクロールしないと見えない
③「タイアップ」のみ「@brand とのタイアップ投稿♡」広告性が伝わらない曖昧表現
④動画の概要欄のみ記載YouTubeで動画内では一切触れず説明欄だけ視聴者が気づきにくい

消費者庁の運用基準では——

表示内容全体から見て、社会通念上、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているか

が判断基準。つまり、**「パッと見て広告と分かるか」**がすべて。

実際の措置命令事例——医療法人への命令

2024年6月、消費者庁はステマ規制施行後初の措置命令を、ある医療法人に対して出した。

美容医療クリニックを運営する事業者が、来院した利用者に対して**「Googleマップの口コミ投稿で施術料金を割引する」という対価を提示。利用者が投稿した口コミは、形式上は「個人の感想」だが、実態は事業者の関与のもとに書かれた広告そのもの**だった。

消費者庁の判断は明確——

事業者が表示内容の決定に関与したにもかかわらず、一般消費者がそれを判別困難な状態で表示させていた

「割引と引き換えに口コミ」——この構造が、ステマ規制の典型例として認定された。

「『もしかして、私が参考にしたあの星5の口コミも……』」と、思わずスマホを見返した読者もいるのではないか。

<div class="callout-warn"> <div class="callout-title">「口コミキャンペーン」は要注意</div>

商品購入後に「レビュー投稿で500円キャッシュバック」のようなキャンペーンに参加して、ポジティブな感想を書く——これも条件次第でステマ規制違反の対象になり得る。事業者からの対価(金銭・商品・割引)があり、かつ広告である旨が明示されていなければアウト。

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消費者が「ステマ投稿」を見抜く5つのチェックポイント

Aさんのように後悔しないために——投稿を見る側にも「目」が必要になる。

Step 1:過剰な絶賛トーンを警戒する

「人生変わった」「もう手放せない」「友達にも勧めまくってる」——一つの商品にここまで熱量を注ぐ投稿は、まず疑ってみる価値がある。

Step 2:投稿者の過去投稿を遡る

そのインフルエンサーが、同じカテゴリの競合商品を別の投稿で同じように絶賛していないか?もし絶賛していたら、いずれかは(あるいは両方が)案件である可能性が高い。

Step 3:キャプション末尾と画像の隅を確認

「PR」「Sponsored」「Ad」「タイアップ」「提供」——これらの語が目立つ位置にあるか。スクロールしないと見えない場所にあるなら、それ自体が運用基準違反の疑い。

Step 4:コメント欄で「これ案件?」を探す

フォロワーは意外と鋭い。コメント欄に「これって広告ですか?」という質問があり、投稿者が答えていない場合は、要警戒。

Step 5:ECサイトの口コミと照合

インフルエンサーが絶賛する商品でも、Amazonや楽天のレビューが軒並み★2〜3なら、現実は別の場所にある。

<div class="callout-tip"> <div class="callout-title">「広告」を読む力は、現代の必須スキル</div>

ステマ規制が施行されても、グレーゾーンの投稿は減らない。法律は最低ラインを引いただけで、賢く買うかどうかは消費者一人ひとりの判断にかかっている

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被害に遭ったと感じたら——動くべき3つの窓口

誇大な投稿を信じて高額商品を買ってしまった。返品もできない。そんなときは、一人で抱え込まない。

窓口連絡先何ができるか
消費者ホットライン188(いやや!)最寄りの消費生活センターに繋がり、相談員が助言
消費者庁「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」消費者庁HP怪しい広告を通報、措置命令の端緒に
国民生活センター越境消費者センター(CCJ)など海外事業者の場合も対応

通報したからといって個別の返金が約束されるわけではない。しかし、情報が集まれば集まるほど、消費者庁は動きやすくなる。「自分一人の声」ではなく「束ねられる声の一つ」として、188に電話する意味は大きい。

違反を見たら——黙って通り過ぎない

ステマ規制は、施行されてまだ日が浅い。違反事例の蓄積も、消費者の「気づき」も、これから増えていく段階にある。

推しのインフルエンサーを信じたい気持ちは分かる。けれど、信用と広告は別物だ。広告であることを隠して商品を勧める行為は、フォロワーへの裏切りでもある。

投稿の隅に小さく「PR」と書かれているか。それを確認するわずか数秒の習慣が、Aさんのような後悔から、自分自身を守ってくれる。

※本コラムは一般的な情報提供であり、個別の法律相談・医療相談の代替にはなりません。具体的なトラブルでお困りの際は、消費者ホットライン188または弁護士等の専門家にご相談ください。

出典

  • 消費者庁「景品表示法第5条第3号の規定に基づく指定」(令和5年内閣府告示第19号)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/
  • 消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」
  • 消費者庁 措置命令公表資料(令和6年6月)https://www.caa.go.jp/notice/
  • 国民生活センター「ステルスマーケティングに関する注意喚起」http://www.kokusen.go.jp/
  • 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)第5条
  • 消費者ホットライン 188(消費者庁)