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紅麹だけじゃない——機能性表示食品の届出撤回が示す「制度の死角」

機能性表示食品の届出撤回はなぜ起きるのか。紅麹問題後の制度改正と撤回事例から、消費者が買う前に確認すべきポイントを解説します。

公開: 2026-06-08更新: 2026/6/8
紅麹だけじゃない——機能性表示食品の届出撤回が示す「制度の死角」

「機能性表示食品」と書かれたパッケージを、なんとなく信頼して手に取ったことはないだろうか。

「国が認めた健康食品」——そう思い込んでいる消費者は少なくない。だが実際には、企業が自社の責任で機能性を表示し、消費者庁に届け出るだけの制度だ。審査は行われない。そして、いったん受理された届出が、後から撤回されるケースが相次いでいる。

2024年の紅麹サプリ問題をきっかけに、この制度の「死角」が広く知られるようになった。だが撤回の理由は健康被害だけではない。エビデンス不足、科学的根拠の崩壊、原材料の問題——様々な事情で、棚に並んでいた商品が静かに消えていく。

消費者が知らないままでは、自衛のしようがない。

Q1. そもそも「届出撤回」とはどういう状態を指すのか?

機能性表示食品は、食品表示法に基づく届出制度で運用されている。特定保健用食品(トクホ)のような国の審査・許可は受けない。事業者が安全性や機能性の科学的根拠をまとめ、消費者庁長官に届け出ることで販売できる仕組みだ。

食品表示基準(内閣府令)第2条第1項第10号:機能性表示食品とは、疾病に罹患していない者に対し、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的が期待できる旨を、科学的根拠に基づいて容器包装に表示する食品(届出を行ったものに限る)。

つまり——お墨付きではなく、自己申告に近い。

「届出撤回」とは、いったん受理された届出を、事業者自らが取り下げる手続きを指す。撤回されるとデータベースから削除され、機能性表示食品として販売できなくなる。消費者庁の機能性表示食品制度届出データベースを見ると、撤回件数は年々増加している。

問題は——撤回の事実が、店頭で消費者に直接伝わる仕組みがないことだ。在庫として残った商品はそのまま流通し続けるケースもある。

<div class="callout-warn"> <div class="callout-title">「届け出済み=安全」ではない</div>

受理番号があっても、それは消費者庁が中身を保証した証ではない。あくまで「書類が提出された」というだけの事実だ。

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Q2. なぜ届出が撤回されるのか?主な理由は?

撤回理由はいくつかのパターンに分類できる。消費者庁が公表している届出撤回情報を整理すると、ざっくり次のような傾向が見える。

パターン内容消費者への影響
① 科学的根拠の不備引用した論文の解釈ミス、研究の質が不十分と判明「効く」前提が崩れる
② 健康被害の発生摂取者に重大な健康被害が報告された安全性そのものへの疑念
③ 原材料の変更・調達不能機能性関与成分の規格が維持できなくなった同名商品でも中身が別物に
④ 事業上の理由販売終了、企業の方針変更表示根拠の検証が打ち切られる
⑤ 届出内容の重大な誤り表示と中身の不一致が発覚誤認購入の可能性

2024年3月の紅麹関連サプリメントの健康被害問題は、②の典型例として社会に大きな衝撃を与えた。死亡例を含む腎障害が報告され、関連する届出が一斉に撤回された。

だが見落とされがちなのは、①の「科学的根拠の不備による撤回」が静かに、しかし継続的に起きていることだ。事業者が引用した研究論文に統計的な問題があると指摘され、撤回に追い込まれる事例が複数公表されている。

「『効果がある』と書かれていたから買ったのに——」

そんな声が、消費生活センターに寄せられている。

Q3. 紅麹問題のあと、制度はどう変わったのか?

紅麹サプリ問題を受け、政府は2024年9月に食品表示基準を改正した。主な改正点は次の通り。

  • 健康被害情報の報告義務化:重篤な健康被害情報を把握した場合、事業者は遅滞なく行政へ報告する義務を負う
  • GMP(適正製造規範)に基づく製造管理:サプリメント形状の機能性表示食品については、GMP基準での製造が求められる
  • 届出情報の充実:安全性・機能性の根拠の透明性を高める運用へ

これは大きな前進だ。しかし——過去に届け出られた数千件の商品が、すべて新基準で再検証されているわけではない

経過措置期間中に流通する商品については、消費者側で「いつの届出か」「最近撤回されていないか」を確認する必要がある。

食品表示法第6条:内閣総理大臣は、販売の用に供する食品の表示が著しく事実に相違するものであるときは、当該食品関連事業者に対し、表示事項を表示し、又は遵守事項を遵守すべき旨を指示することができる。

ざっくり言えば——国は事後的に是正命令は出せるが、事前に内容を保証してくれるわけではないということだ。

Q4. 消費者が買う前に確認できることはあるのか?

ある。しかも、無料で、数分でできる。

Step 1:消費者庁のデータベースで届出番号を検索する

パッケージに記載された届出番号(例:A123)を、消費者庁の「機能性表示食品の届出情報検索」サイトで入力する。届出の現状(有効/撤回)、機能性関与成分、エビデンスの種類が確認できる。

Step 2:撤回情報を確認する

同じ消費者庁サイトに「届出撤回情報」のページがある。撤回理由のカテゴリ(健康被害/科学的根拠/事業上の理由など)がわかる。

Step 3:「機能性の根拠」の種類を見る

エビデンスには大きく2種類ある。

種類説明信頼性の目安
最終製品を用いた臨床試験その商品そのもので試験している比較的高い
研究レビュー(SR)既存論文をまとめた評価内容次第でばらつき大

研究レビューの場合、引用論文の質によって信頼性が大きく異なる。

<div class="callout-tip"> <div class="callout-title">30秒チェックの習慣を</div>

買う前に届出番号でググるだけで、撤回情報や問題報告が出てくることがある。SNSの体験談より、まず消費者庁データベースを見るほうが早い。

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Q5. 撤回された商品を購入していた場合、どう対応すればいい?

まず落ち着いて——撤回=必ずしも危険ではない。科学的根拠の不備が理由なら、健康被害の心配は低いケースもある。

ただし、次のような場合は速やかに行動する。

ケース別の対応

状況取るべき行動
体調不良がある摂取を中止し、医療機関を受診。お薬手帳に商品名を記載
健康被害が原因の撤回販売元・製造元へ連絡。返金や医療費補償を相談
「効くと信じて買った」だけ景品表示法上の優良誤認に該当する可能性があるため記録を残す
定期購入で継続中解約手続きへ。応じてもらえない場合は188へ

景品表示法第5条第1号は、商品の内容について実際よりも著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)を禁じている。届出撤回後も誤認を招く表示が続けば、措置命令の対象となり得る。

医療機関を受診した場合は、摂取していた商品名・摂取期間・症状の経過をメモにまとめて持参すると診断がスムーズだ。PMDAの「医薬品副作用被害救済制度」は健康食品には適用されないが、医師の判断で原因究明の検査が行われることもある。

<div class="callout-warn"> <div class="callout-title">「もう飲んでしまったから」と諦めない</div>

返金や補償の交渉、相談記録は後から大きな意味を持つ。撤回された事実そのものが、消費者の主張を裏付ける証拠になる。

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まとめ:制度を疑うのではなく、制度を「使いこなす」

機能性表示食品制度は、消費者の選択肢を広げた一方で、自己責任の比重も大きくした制度だ。「届出されている=安心」と思考停止すると、撤回情報の波に取り残される。

大切なのは——買う前の30秒検索と、買った後の体調観察。この2つを習慣にするだけで、被害リスクは大幅に下がる。

もし「あの商品、大丈夫だろうか」と不安になったら、ためらわず消費者ホットライン188(局番なし)に電話してほしい。最寄りの消費生活センターにつながり、専門の相談員が無料で対応してくれる。

なお本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療判断・法律判断の代替にはならない。健康被害が疑われる場合は速やかに医療機関を、契約トラブルは弁護士や消費生活センターを頼ってほしい。

小さな違和感を、見過ごさないこと。それが、制度の死角から身を守る最初の一歩になる。


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出典

  • 消費者庁「機能性表示食品制度届出データベース」https://www.fld.caa.go.jp/
  • 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」
  • 消費者庁「食品表示基準の一部を改正する内閣府令」(2024年9月公布)
  • 食品表示法(平成25年法律第70号)第6条
  • 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)第5条
  • 国民生活センター「機能性表示食品に関する相談事例」http://www.kokusen.go.jp/
  • 厚生労働省「いわゆる『健康食品』のホームページ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/
  • 消費者ホットライン:188(いやや!)