健康食品で「病気が治る」は違法表示|薬機法違反の実例と見分け方
健康食品に「がんに効く」「血圧を下げる」などの効能効果を表示すると薬機法違反になります。実際の違反事例と消費者が身を守るための見分け方を解説します。
健康食品に「治る」「効く」と書いてはいけない理由
健康食品やサプリメントの広告で「がんが消えた」「糖尿病が改善」「血圧が正常に」といった表現を目にしたことはないでしょうか。こうした医薬品的な効能効果の表示は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で禁止されています。
薬機法第68条は、医薬品として承認を受けていない製品について、疾病の治療・予防効果を標榜することを禁じています。これは消費者が「この健康食品を飲めば病気が治る」と誤認し、本来必要な医療を受ける機会を逃してしまうことを防ぐためです。
<div class="callout-warn"> <div class="callout-title">なぜ「効く」と書けないのか</div>医薬品は厳格な臨床試験を経て有効性・安全性が確認されています。一方、健康食品にはそうした審査がありません。科学的根拠なく「効く」と表示することは、消費者の健康と財産を危険にさらす行為として法律で規制されています。
</div>薬機法が禁止する「医薬品的効能効果」とは
厚生労働省は「医薬品の範囲に関する基準」(いわゆる46通知)で、健康食品が医薬品とみなされる条件を示しています。以下のような表示・広告を行うと、その製品は「無承認無許可医薬品」として薬機法違反となります。
違反となる表示の例
- 疾病の治療・予防を標榜:「がんを予防」「糖尿病を改善」「高血圧に効く」
- 身体の構造・機能への影響を標榜:「肝臓の働きを高める」「免疫力を強化」「ホルモンバランスを整える」
- 医薬品的な用法用量の指定:「食前に2錠」「症状が出たら服用」
- 医薬品と誤認させる形状:アンプル形状など
許容される表示の例
一方で、以下のような表現は一般的に許容されています。
- 栄養補給に関する表現:「不足しがちな栄養素を補う」
- 健康維持に関する一般的な表現:「毎日の健康をサポート」「元気な毎日を応援」
- 機能性表示食品・特定保健用食品として届出・許可された範囲内の表現
実際に行政処分を受けた違反事例
厚生労働省や各都道府県は、薬機法違反の健康食品に対して継続的に取り締まりを行っています。以下は公表された代表的な事例です。
事例1:がんへの効果を標榜した健康食品
東京都福祉保健局は、インターネット上で「末期がんが改善」「抗がん作用」などと表示して健康食品を販売していた事業者に対し、薬機法第68条違反として行政指導を実施しました。当該製品は医薬品としての承認を受けておらず、科学的根拠のない効能効果を謳っていました。
事例2:新型コロナウイルスへの効果を標榜
2020年以降、消費者庁と厚生労働省は連携して、新型コロナウイルスの予防効果を標榜する健康食品の監視を強化しました。「ウイルスを不活化」「感染を防ぐ」といった表示を行った複数の事業者に対し、景品表示法および薬機法に基づく行政指導が行われています。
事例3:ダイエット効果と医薬品成分の混入
厚生労働省の発表によると、「飲むだけで痩せる」と標榜していた海外製の健康食品から、医薬品成分であるシブトラミン(食欲抑制剤として過去に使用されていた成分で、心血管系への副作用により多くの国で販売中止)が検出された事例があります。このような製品は、薬機法違反であるだけでなく、重篤な健康被害を引き起こすリスクがあります。
<div class="callout-tip"> <div class="callout-title">行政処分情報の確認方法</div>厚生労働省の「健康食品の安全性に関する情報」ページや、各都道府県の薬務課のウェブサイトでは、違反事例や注意喚起情報が公開されています。気になる製品があれば、これらの情報源を確認することをお勧めします。
</div>違反表示を見分けるチェックポイント
消費者が健康食品を購入する際、以下のポイントに注意することで違法な製品を避けることができます。
チェックリスト
-
具体的な病名が記載されていないか
- 「糖尿病」「高血圧」「がん」「認知症」などの病名が出てきたら要注意
-
「治る」「効く」「改善」といった断定的表現がないか
- 健康食品でこれらの表現を使うことは原則として違法
-
体験談で治療効果を示唆していないか
- 「この商品を飲んで血糖値が正常になりました」といった体験談も、効能効果の標榜として違法となりうる
-
医師や専門家を装った推奨がないか
- 白衣を着た人物の写真や「医学博士推奨」といった表現で信頼性を演出している場合は注意
-
「〇〇学会で発表」「特許取得」で効果を暗示していないか
- 学会発表や特許は効果の証明にはならない
機能性表示食品・特保との違い
「健康食品は一切効能効果を表示できない」というわけではありません。日本には、一定の条件のもとで機能性を表示できる制度があります。
特定保健用食品(トクホ)
消費者庁長官の許可を受けた食品で、科学的根拠に基づいた保健機能を表示できます。「お腹の調子を整える」「コレステロールの吸収を抑える」などの表現が可能です。
機能性表示食品
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示できる制度です。消費者庁に届出が必要ですが、許可制ではありません。
一般の健康食品
上記の制度に基づかない健康食品は、身体の構造・機能に影響を与えるような表示はできません。
重要なのは、トクホや機能性表示食品であっても、「病気の治療・予防」に関する表示は認められていないということです。あくまで「健康の維持・増進」の範囲内での機能性表示に限られます。
健康被害が発生した場合の対応
万が一、健康食品を摂取して体調不良を感じた場合は、以下の対応を取ってください。
- 直ちに摂取を中止する
- 医療機関を受診する(摂取していた製品を持参)
- 製品と購入時の資料を保管する(パッケージ、レシート、広告など)
- 消費者ホットライン(188)に相談する
消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。健康食品のトラブルだけでなく、定期購入の解約トラブルなども相談できます。相談は無料です。
</div>違反広告を見つけた場合の通報先
明らかに違法と思われる広告を発見した場合は、以下の機関に情報提供することができます。
- 都道府県の薬務主管課:薬機法違反の通報窓口
- 消費者庁「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」:優良誤認表示等の通報
- 国民生活センター:消費者被害の情報収集
こうした情報提供は、同様の被害を防ぐために重要な役割を果たします。
まとめ:自分の身を守るために
健康食品市場には、残念ながら法律を無視した誇大広告が存在します。「病気が治る」「症状が改善する」といった表現のある健康食品は、薬機法違反の疑いが強く、効果が期待できないだけでなく、適切な医療を受ける機会を逃すリスクがあります。
消費者として心がけたいことは以下の3点です。
- 「治る」「効く」と断言している健康食品は購入しない
- 体調不良がある場合は、健康食品に頼らず医療機関を受診する
- 困ったことがあれば消費者ホットライン(188)に相談する
健康食品は医薬品の代わりにはなりません。正しい知識を持って、賢く製品を選びましょう。
注意:この記事は一般的な情報提供を目的としており、法律相談や医療相談の代替となるものではありません。具体的な法的問題や健康上の問題については、弁護士や医師等の専門家にご相談ください。
出典
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第68条
- 厚生労働省「医薬品の範囲に関する基準について」(昭和46年6月1日薬発第476号)
- 厚生労働省「健康食品の安全性に関する情報」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/index.html
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/
- 東京都福祉保健局「健康食品ナビ」 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/kenko_shokuhin/ken_syoku/
- 国民生活センター「健康食品の安全性・有効性情報」 https://www.kokusen.go.jp/
- 消費者ホットライン(188) https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/